昨今は結婚式を挙げない「ナシ婚」、「地味婚」、「フォト婚」を選ぶカップルも増えてきていますが、このような状況で注目を集めているのがブライダルカメラマン(ウェディングカメラマン)です。ウエディングプランナーとしてブライダル業界で働く場合、ブライダルカメラマンと協力するケースも多いでしょう。この記事ではブライダルカメラマンの業務内容や年収、必要なスキルなどについて解説します。
目次
ブライダルカメラマン(ウェディングカメラマン)とは
ブライダルカメラマンは、結婚式にまつわる写真撮影を行うカメラマンです。ウェディングカメラマン、ウェディングフォトグラファーとも呼ばれています。結婚式当日のスナップ撮影や、前撮りが主な業務です。また、フリーのカメラマンであれば、撮影だけではなく撮影データのセレクト、現像(色合い調整)・納品までのプロセスにも対応します。
昨今は新郎新婦の価値観も多様化し、新郎新婦が「自分たちらしさ」を演出するスタイルも多く、さらに派手な演出は避ける「地味婚」も人気を集めています。これだけ聞くとブライダル業界が衰退しているように感じるかもしれませんが、モノよりコト(経験)を重視する層が増えているため、結婚式そのものの需要は薄れていません。
そして、たとえ家族だけの挙式であっても、その姿を写真に残したいと考えるカップルも多いです。また、結婚式を挙げない「ナシ婚」を選ぶカップルであっても、教会・ホテルでウエディングフォトだけは撮影するケースも少なくありません。
このように結婚式や披露宴は挙げないものの、ウエディングドレスや和装で写真撮影するスタイルは「フォト婚」とも呼ばれています。一生に一度の記念となるウエディングフォトの需要は今後増えていき、ブライダル業界においてブライダルカメラマンの存在価値はますます高まっていくと予想されます。
ブライダルカメラマンの業務の流れ
フリーランスのカメラマンとしてウエディングフォトを撮影する場合、業務の流れは次のようになります。
- 新郎新婦・ウエディングプランナーとの打ち合わせ
- 機材準備・ロケハン
- 撮影当日
- 写真・動画の編集
- 納品
それぞれ実際の業務について紹介するので、参考にしてください。
新郎新婦・ウエディングプランナーとの打ち合わせ
新郎新婦やウエディングプランナーと話し合い、撮影イメージを固めていきます。ウエディングプランナーはブライダルに関する総合的な知識を有しており、さまざまなカップルの事例も知っているため、企画段階から協力を仰ぎましょう。
機材準備・ロケハン
撮影プランが決まったら、カメラや照明などの準備と合わせて、ロケハン(ロケーション・ハンティング)も行います。ロケハンとは、撮影場所をあらかじめ下見するステップです。庭園や教会でフォト婚を挙げる場合は、ウエディングプランナーを交えてロケハンするケースもあります。また、結婚式・披露宴も撮影するケースでは、ウエディングプランナーと式中の導線を確認しなければなりません。
撮影当日
結婚式・フォト婚の当日は、式の演出・進行に合わせて撮影を進めます。撮影するべきタイミングを逃さないよう、ブライダルカメラマンには集中力も求められます。結婚式前後には前撮り・後撮りもあるため、一日がかりで対応するケースが多いです。
写真・動画の編集
撮影後の写真、動画編集もブライダルカメラマンの業務です。色合いや明るさなどを調整し、素敵なウエディングフォトへと仕上げていきます。
納品
編集した作品は、後日新郎新婦へ納品します。最近では挙式日に編集し、エンドロールの演出に撮影データを活用するケースもあるため、ウエディングプランナーと調整しておきましょう。
ブライダルカメラマンに求められるスキル・資格
ブライダルカメラマンになるために必要な資格・免許はとくにありません。資格や免許よりも、撮影スキル・編集技術が求められます。ただし、ブライダルカメラマンとして活躍するためには、撮影スキルを含め、次のような要素が求められることも覚えておきましょう。
- 撮影スキル・編集技術
- ブライダル関連の資格
- 責任感
- コミュニケーション能力
- 体力
- マナー・プロトコール(国際儀礼)の知識
失敗が許されない結婚式での写真撮影を任せられるだけの撮影スキルを身につけることが最優先ですが、これらのスキルを身につけることも不可欠です。それぞれ詳しく解説するので、ブライダルカメラマンを目指している方はぜひ参考にしてください。
撮影スキル・編集技術
ブライダルカメラマンとして活躍するためには、結婚式の一瞬を切り取る撮影スキル・編集技術が求められます。また、昨今ではウエディングフォトの撮影と合わせて動画コンテンツを制作するケースもあるため、動画編集技術も身につけておくと重宝されます。
ブライダル関連の資格
ブライダルカメラマンとして付加価値を高め、結婚式・披露宴への知識を深めるために、ブライダル関連の資格を取得してみてもいいでしょう。たとえば公益社団法人日本ブライダル文化振興協会が実施する国家検定「ブライダルコーディネート技能検定」の3級については、ブライダル事業関連業務に従事しようとしている方すべてに受験資格があります。
責任感
結婚式・披露宴での撮影は、やり直しができません。ミスできないプレッシャーを感じながらも、最高の一瞬を切り取る責任感がブライダルカメラマンには求められます。
コミュニケーション能力
くわえて、新郎新婦・ウエディングプランナーがイメージしている瞬間を掴むために、ブライダルカメラマンにはコミュニケーション能力も求められます。提案する力はもちろんですが、相手からニーズを引き出すための「聞く力」も求められるのです。
体力
結婚式の時間はおおむね4〜5時間程度ですが、ブライダルカメラマンは重い機材を持ちながら撮影を続けなければなりません。最高の瞬間がいつ訪れるかは分かりませんから、ブライダルカメラマンには数時間動き続ける体力も求められます。
マナー・プロトコール(国際儀礼)の知識
ブライダルカメラマンは結婚式というフォーマルな場で活動するため、マナー・プロトコール(国際儀礼)の知識も欠かせません。撮影を進めつつ、さらに新郎新婦・ご家族・ゲストに不快感を与えない心遣いも求められるのです。
撮影現場のドレスコードに指定がない場合でも、結婚式のスタイルに合わせた服装を選べるように、フォーマルなシーンの服装マナーについても知っておきましょう。男性であればダークトーンのスーツ・ジャケット、女性であればパンツスーツが無難です。撮影のために動きやすさも求められますが、マナーを守る意識もブライダルカメラマンには重要です。
ブライダルカメラマンのやりがい
ブライダルカメラマンは先述したとおり、求められるスキルが多く責任も重いため、ハードな仕事といえます。しかしハードな反面、やりがいが大きいことも事実です。ブライダルカメラマンのやりがいとしては、次の3つが挙げられます。
- カメラスキルを活かせる
- 創造性を活かせる
- 新郎新婦の特別な瞬間に立ち会える
これらすべてに魅力を感じる方は、ブライダルカメラマンを目指してもいいかもしれません。それぞれ具体的に紹介します。
カメラスキルを活かせる
カメラスキルを活かし、カメラマンとして生計を立てたいと考えている方もいるかもしれません。しかし実情として、スポーツカメラマンやファッションカメラマンは撮影シーンが限られるため、プロカメラマンとして生計を立てることは簡単ではありません。
一方、結婚式は繁忙期・閑散期があるものの一年を通じて挙式され、日本全国に需要があります。今後はフォト婚の需要が増えていくことが予想されますから、カメラスキルを活かしたい方はぜひブライダルカメラマンを目指してみてください。
創造性を活かせる
ブライダルカメラマンは、創造性を活かせる仕事である点も魅力です。たとえば個人相手の撮影需要としては、七五三撮影や成人式撮影なども挙げられますが、ある程度撮影のかたちは決まっています。
一方ウエディングフォトは、新郎新婦のニーズを取り入れながら、比較的自由に撮影プランを決められます。ブライダルプランナーと協力し、新郎新婦オリジナルの撮影プランを提案することも可能です。
新郎新婦の特別な瞬間に立ち会える
ブライダルカメラマン最大のやりがいとしては、新郎新婦の特別な瞬間に立ち会えることが挙げられるでしょう。結婚式は多くの方にとって、人生のなかでもっとも特別な瞬間です。このような瞬間を自分のセンスで撮影し、二人の記念として残せる仕事は、ブライダルカメラマンでしか経験できません。
ブライダルカメラマンになる方法
ブライダルカメラマンになりたいと考えている方は、写真・映像の専門学校に通い、技術や知識を身につけるケースが多いです。しかし、卒業後にブライダルカメラマンになる方法は一つではなく、大きく次の3パターンに分けられます。
- カメラマン事務所(写真スタジオ)に就職する
- プロカメラマンのもとで修行する
- フリーランスとして開業する
これらを順番に経験する方もいれば、いきなりフリーランスとして開業する方もいるため、キャリアプランはさまざまです。それぞれ詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。
カメラマン事務所(写真スタジオ)に就職する
ブライダルカメラマンの就職先の代表例は、結婚式の写真撮影に対応しているカメラマン事務所(写真スタジオ)です。この場合はブライダル以外の写真撮影を行うこともありますが、結婚式場と提携している事務所に就職すれば、未経験からでも経験を積めるでしょう。
所属する事務所によって提供サービスはもちろん、撮影する写真の雰囲気も異なります。自分のスキルを磨くためにも、センスのマッチする事務所に所属するようにしてください。
プロカメラマンのもとで修行する
すでにブライダルカメラマンとして活躍しているプロカメラマンのもとで、アシスタントとして修行するケースもあります。プロのカメラマンに随行することで撮影技術やコミュニケーション術を間近で学べますし、ブライダル業界への人脈も広げられるかもしれません。
フリーランスとして開業する
フリーランスのブライダルカメラマンとして開業する場合は、自分で結婚式場やホテル、もしくは新郎新婦へ営業し、依頼をもらわなければなりません。そのため撮影スキルだけではなく、営業スキルやプロモーション能力を求められます。
カメラマン事務所やプロカメラマンのもとで経験を積めば、フォトウエディングの案件獲得方法も学べるでしょう。いきなり独立するのではなく、ある程度の実力をつけてから開業することをおすすめします。
ブライダルカメラマンの年収
一般的なカメラマンの年収は、250万円〜300万円程度といわれています。ブライダルカメラマンも同程度の水準で、決して高年収な業種とはいえません。アシスタントとしての修業時代は、さらに報酬が下がることもあります。
しかし、人気の高いブライダルカメラマンや、独立した事業主としてのカメラマンは、高収入を得ているケースも多いです。動画編集も含めて付加価値を高めたり、リゾートウエディングに特化したりすることで、単価を上げていくことも可能でしょう。サラリーマンではなく、事業主としてブライダルカメラマンを目指す場合は、高収入が期待できます。
まとめ
ブライダルカメラマンは結婚式・披露宴で訪れる最高の瞬間を撮影することが求められるため、責任も大きいですが非常にやりがいのある職種です。今後は「フォト婚」を選ぶカップルが増えることも予想されるため、ブライダルカメラマンの需要はますます高まっていくと予想されます。
ブライダルカメラマンになる方法としては撮影スタジオへの就職、プロカメラマンのアシスタント、フリーランスとしての開業などさまざまなケースが考えられますが、学生であればブライダル関連の専門学校に進学してもいいでしょう。専門学校で学べばブライダルについて深い知識を学べますし、ブライダルカメラマン以外の職種(ウエディングプランナーやブライダルフラワーコーディネーターなど)への可能性も広がります。
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